予算
「予算とは、企業の諸活動を貨幣的に表示し、それをまとめたものです。
たとえば、販売計画を具体的に予算として貨幣的に表示すれば売上予算となり、
その販売計画のなかでかかる経費にっいて貨幣的に表示すれば販売経費予算となります。」
つまり、企業活動の最終目標は最大利潤の獲得であるので、あらゆる企業活動は貨幣額で表示が可能となり、企業活動に際して前もって売上額や利益額などを貨幣額で表示したものが予算というわけです。
これが予算です。
◆予算管理
予算管理の定義は、 「1 年、または1か月先の売上、費用、損益、資金などをあらかじめ見積もり、守って
いる仕組みのこと」です。
また、「予算管理とは、将来の定期間(予算期間) における小売業の目標利益を達成するために必要な計画を貨幣額C よって示した、 総合的な利益管理のための技法であるといえる」とも言えます。
つまり、予算管理の目的は、将来の定期間における目標利益の達成にあり、予算管理はそれを実現するための
総合的な利益管理(売上、費用、損益などの見積りなど) のこととなります。
予算管理には、「計画機能」「調整機能」「統制機能」という3 っの機能があります。
予算の逆機能と組織の硬直化
いかに綿密な見積りを立てても、それはあくまでも過去のデータをもとにしたものですから、実際には予想だにしない事態が多々発生します。
たとえば、経営環境の著しい好転により売上高が当初の予算を大幅に上回る事態が発生したときは、当初の
予算にできるだけ近づけるために、売上増大の努力を抑制することもあります。
これを予算の逆機能といいます。
その年に当初の予算を大幅に上回る売上高を達成した場合, 次期の予算はそれをさらに上回ることになります。
しかし、それは当事者にとっては大きな負担になるため、当初の予算にできるだけ近い額でおさめようということにするのです。
つまり、売上高を増大するための手段としての予算が逆に、売上高の増大を抑制することになることもあるわけです。
また、予算管理のデメリットとして、組織の硬直化が挙げらます。
予算管理が必要以上に強化されると、予算が賞罰の基準となるため、予算通りの結果を残すことに全力を注ぐことになります。
そのため、短期的視点からの行動が目立っようになり、長期的視点から対処できなくなります。
この結果、組織の硬直化が進むことになり、予算管理が裏目にでてしまいます。
◆予算の種類と体系
予算にもいろいろな種類があります。
経常予算
常に繰り返して行われる経営活動にっいての予算のことです。
これは、損益予算と資金予算に分かれます。
損益予算
損益計算にかかわる収益と費用についての予算のことです。
資金予算
短期の財務予算で, 運転資金や現金資金にっいての予算のことです。
資本予算
長期の財務予算で、中長期経営計画にもとづくものです。
設備予算
研究開発予算、その他の設備の投資に関する投資予算などからなります。
予算編成の方式
これには、次の3つがあります。
- トップダウン方式
トツプマネジメントの設定した目標利益にもとづいて、各部門がそれを実現するため、現場の末端まで目標利益を割り当て、予算を一方的に押しつけるもの。 - ボトムアツプ(積上げ) 方式
各部門が自主的に予算を作成し、それらを積み上げて会社としての利益を決めるもの。 - 折衷方式
トツプダウン方式とボトムアツプ方式の両方を取り入れたもの。
つまり、トツプマネジメントが方針を指示し、各部門が自主的な予算を作成し、調整を行った後、会社としての目標利益を決めるもの。
最近の傾向としては、トツプダウン方式にウェイトをおいた折衷方式萨採用されることが多い。
経常予算の編成方法
経常予算は通常、次のように、売上高予算を中心に編成されます。
なお、売上高予算の編成は、販売分析、市場分析などの順でなされます。
- 売上高予算から仕入予算を編成する。
- 荒上高予算から営業費予算を編成する。
- 売上高予算から資金予算を編成する。
予算統制
予算統制とは、「編成された予算が、経営活動の実行過程で計画どおりに進行しているかどうかを、計画との差異で把握し、できるだけ計画に近づけていこうとする活動をいう」と定義されています。
なお、編成された予算と実績との差異を把握する際に使用されるのが予算差異分析です。
差異分析
予算と実績の差異を価格要因と燮数量要因に分けて、差異の大きさを分析します。
たとえば、予算と実際との価格および数量が下表の場合、販売価格差異と販売数量差異を計算してみます。
<計算例1>
予算 | 実際 | |
販売価格 | 500円 | 520円 |
販売数量 | 300個 | 350個 |
販売価格差異=(実際販売価格-予算販売価格) ×実際販売数量
したがって、
販売価格差異
=(520-500)×350
=7000円
販売数量差異
=予算価格×(実際販売数量-予算販売数量)
したがって、
販売数量差異
=500×(350-300)
=25000円
統差異=販売価格差異十販売数量差異
したがって、
総差異=7000+25000
=32000円
なお、この場合, 販売単価,販売数量とも予算を上回っているので、有利な結果、つまり有利差異となります。
<計算例2>
予算 | 実際 | |
販売価格 | 400円 | 350円 |
販売数量 | 500個 | 420個 |
販売価格差異=(350-400)×420=-21000円
販売数量差異=400×(420-500)=-32000円
総差異=-21000+(-32000)=-53000円
この場合、販売単価,販売数量とも予算を下回っているので、不利な結果、つまり不利差異となる例です。
利益計画
「目標利益に対する不足利益を捻出するために、売上と費用を総合的に計画するプロセスのこと」が利益計画です。
目標利益は次の式で示されます。
目標利益 = 予定売上高 – 許容費用
利益計画においては、
- まず目標利益額を設定し、
- それを達成するためにはどれだけの売上高炉必要か、
- そして、許容される費用はいくらか
が決まります。
許容される費用は次式から計算します。
予定売上高 – 目標利益 = 許容費用
なお、売上高および費用の両予算を算出する方法として、损益分岐点の計算があります。
損益分岐点
利益も損失も生まれない、損益ゼ口の売上高のことを損益分岐点といいます。
この時、次式が成立しています。
売上高-費用=0
売上高=費用
売上高が少ない段階において損失が生じるが、売上高が多くなると、売上高が費用と等しくなり、損益分岐点に達っします。
そして、さらに売上高が多くなると、利益が生まれます。
固定費が存在するために、このような動きになります。
費用は、固定費と変動費にわけられる
固定費
売上高の増減に関係なく、一定期間において一定額かかる費用のことです。
したがって、売上高が少ない段階においては固定費が重荷となり、損失を生じることになります。
人件費、減価償却費などがこれに該当します。
変動費
変動費は、売上高の増減の影響を受ける費用で、売上高が増加すると費用は増加し、反対に売上高が減少すると費用は減少します。
売上原価、販売管理費などがこれに該当します。
売上基線(収益線ともいう)は、売上高をx , 費用をyとするとy=xと表すことができます。
また、総費用線は、売上高をx、費用をyとすると、
y=ax+b (a、bは定数)で表すことができます。
aは総費用の傾きであるので、
\(\displaystyle a=\frac{変動費}{売上高}\)
と表すことができます。
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