W/R比率(卸売/小売比率)
定義
卸売と小売の販売額の比率をW/R比率(Wholesale/Retail Sales Ratio)と呼び、
「W/R比率」=「卸売販売額」/「小売販売額」
卸売販売額:卸売業の総販売額
小売販売額:小売業者の総販売額
で計算します。
まずW/R比率の計算例を2つ示します。流通経路の長さが大きく比率に影響します。
例1)流通経路の長さ1段の場合
生産者が50兆円で、卸売業者Aに販売
卸売業者Aが60兆円で、小売業者に販売
小売業者が100兆円で、販売した場合
W/R比率=60/100=0.60
です。
例2)流通経路の長さ2段の場合
生産者が50兆円で、卸売業者Aに販売
卸売業者Aが60兆円で、卸売業者Bに販売
卸売業者Bが80兆円で、小売業者に販売
小売業者が100兆円で、販売した場合
W/R比率=(60+80)/100=1.40
です。
この例からわかるように、卸売業者が2回介入することで、W/R比率は高くなります。
このことから、W/R比率は、
流通経路の多段階性を示す指標となる(大きいほど多段階)
といえます。
また、日本のW/R比率の特徴として
- 日本のW/R比率は高い
- 日本は1982年をピークに低下傾向にある
- 日本は流通経路は短縮化の傾向を示す
が挙げられます。
日本のW/R比率が高い原因
- 日本の場合、輸出向け卸売販売額が多い(輸出向け卸売販売額はW/R比率の対象外)
- 日本の場合、卸売段階数が多い(上の例を参照)
- 卸売業者間の仲間取引が多い(卸売段階数が多い理由)
が原因として考えられています。
輸出向け卸販売額が多いとW/R比率が高くなるのは、次の例からわかります。
例3)輸出向け卸売があった場合
生産者が50兆円で、卸売業者Aに販売
卸売業者Aが輸出向けに10兆円、50兆円小売業者に販売
小売業者が80兆円で、販売した場合
W/R比率=(60)/80=0.75
となります。これを例1と比べてください。卸売の販売額は同じですが小売の販売額(分母)が減り、W/R比率が大きくなっています。輸出向けの販売は小売に流通しないためです。つまり、輸出向けの卸売が増えるとW/R比率が大きくなります。
同じ理由で、産業財(生産財)向けの卸売が多いと小売業への流通が減り、W/R比率は大きくなります。
販売額を消費財のみで評価するために
「W/R比率」=(「卸売業販売額」-「輸出向け・産業用販売額」)/「小売業販売額」
でW/R比率を計算することもあります。
ただ、この計算式で計算しても、日本はW/R比率が高いと言われています。
取引仲間
仲間取引が多いのも日本の特徴としてあげられますが、これは仲間取引が多いと、卸売業のリスクが分散されるためです。例えば、仕入れた商品が売れなかった場合、その負担を仲間で分担できるのでこのリスクは分散されます。
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W/R比率が高いのは、小売業の利幅が少ないともいえます。